おくすり千一夜 第十四話 風邪もいろいろ薬もいろいろ

かぜは年令や体力、疲労の程度によって重い軽いはありますが、発熱、喉や鼻の痛み、咳、痰、下痢、腹痛、嘔気などの症状が見られるものです。原因がウィルスであればワクチンで予防できますが、発症してからでは効果ありません。

風邪は万病の元といわれるようにいろいろな症状があり、原因はウィルスのみではありません。対症療法として考えられる薬剤を全て挙げると発熱解熱剤喉や鼻の痛み鎮痛剤と抗炎症剤がひどければ鎮咳剤、喀痰がきれなければ去痰剤風邪がお腹にくれば止瀉剤か整腸剤肺炎の危険性があれば抗生物質か抗菌剤食欲がなければ消化剤吐き気があれば制吐剤、それに睡眠不足は体力回復の障害になるので催眠導入剤や睡眠剤とたちまち10種類以上になってしまいます。

そこで本当に必要なお薬について考えてみましょう。先ず熱ですが、インフルエンザでみられる高熱でも、必ずしも解熱剤を使う必要はありません。発熱は体内に侵入してきた細菌やウイルスに対して体が闘っている証固です。

熱は闘いの様子を知るバロメータと言えます。からだが本来もっている免疫能を抑える薬剤を投与すると、からだは侵入してきた細菌に対して免疫という武器で闘えなくなり、発熱が起こらなくなります。この場合、発熱しないから風邪が治ったわけではありません。熱があるなと思ったら先ず体を暖かく保って卵酒などで水分を充分にとってよく休み、一汗かくことです。これで熱がさがれば、それは普通の風邪です。後は水枕をして良くお休み下さい。

喉や鼻に痛みを感じ、咳込んで安眠できない場合は、鎮咳剤が必要です。甘草と桔梗の煎じ薬は、飲んでよし、うがい薬としても適当です。 風邪がお腹にきて下痢を起こすこともあります。でもすぐ回復しますので、ほとんどの場合お薬は不要と考えてよいでしょう。 風邪にともなう全ての症状は時間の経過とともに山形を呈します。この症状の山の高さを出来るだけ低くして経過させようと言うのが対症療法薬です。

注意しなければいけないのは、気管支の奥の方から咳とともに黄色みを帯びた喀痰がでて、肺に熱がこもる場合は、肺炎を起こす危険性が高いので、医師から肺炎に効く抗生物質や抗菌剤を処方してもらう必要があります。

さて、風邪の予防はどうしたら良いでしょう。満員電車で通勤していた人が自家用車で通勤したら、風邪をほとんどひかなくなりました。風邪は伝染性の疾患です。自分が引いたら他人に移さないようマスクをしましょう。ひいて困る人は人混みでマスクをしましょう。外出の後はうがいと洗面を励行し、規則正しい生活と、睡眠と栄養を充分にとって抵抗力をつけることです。過労と睡眠不足は大敵です。規則正しい生活がなぜ大切かお話しましょう。

動物も植物も一日夜昼24時間周期、春夏秋冬365日の周期に従って永いこと生きてきました。セミが正確に一年のある時期に地中から出て親になるのも、植物が正確に季節ごとに花を咲かせるのも、からだの中に体内時計があるからです。文明のお陰でわれわれ人間は夜昼の区別がなくなりました。

これが体調を狂わせ、抵抗力を失わせ、病気になりやすい体質を作っているのです。自然のリズムに従うことがいかに大切かご理解いただけたと思います。

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