おくすり千一夜 第二十四話 命を救う笑いの力

笑いは人類の妙薬:

笑うことの出来る動物は人類だけと言ったらチンパンジーから文句が出そうですが、嬉しそうな顔と笑いとは違うものです。昔から「笑う門には福来る」という諺があり、笑いは幸福をもたらすと考えられてきました。最近、笑うことが免疫学的に素晴らしい効果のあることが証明されました。
心の持ち方で生存率に差: 人が癌になるとあと何年生きられるかが問題になります。癌に対してどの様な心理状態で過ごしたかで、生存期間に差が出たという報告があります。  

癌に対して闘争心を持って対応、 病気そのものを否定、冷静に受容、絶望感という四つの心理学的反応に分けてみると、生存率はまえのものほど高かったそうです。また治療の中にリラックス法の実践や大笑いをさせるなどの心理学的学習を取り入れると、再発率も死亡率も数分の一に減少したそうです。また免疫力を示すナチュラルキラー(NK)細胞数は有意に増加しておりました。

データが語る笑いの力:

病人、健康人を含むボランティアーに落語や漫談をたっぷり3時間聞いてもらい、その前後の血液成分を調べたところ、特徴的な変化が見られたのはNK活性でした。値が標準の範囲より低いか、標準範囲内の人達では全てに上昇が見られ、標準値より高い人は一部に標準値上部まで下降が見られました。これで笑いの直後にNK活性が上昇することが確認されました。

CD4/8比についても同様の結果が得られました。この値はヘルパーT細胞とサプレッサーT細胞の比で、免疫のアクセルとブレーキの比率を表しているとお考え下さい。低すぎれば免疫力が弱く、高すぎれば膠原病やリウマチなどの自己免疫疾患になりやすいと、言われるものです。いずれの人達も前後で値が標準範囲に向かっていることが分かりました。またおかしくて笑うのではなく、笑顔を作るという単純な行為をするだけでも、免疫能は良くなることが分かりました。人間の体や脳には大きな潜在力のあることがわかります。

落語家は立派な医療者:

こうなると噺家は立派な医療者と言うことになります。精神神経免疫学会や日本笑い学会が誕生し、盛んに研究が行われております。あなたの日常生活にももっと笑いを取り入れようではありませんか。

対補 : (2005.10.14) NK活性を高め、癌を予防するのに森林浴や丘陵歩きに効果のあることが、ボランテアーでテストされ、テレビ報道されました。

◀︎◀︎表紙へ戻る