おくすり千一夜 第五十話 ボケたくなければ右脳を使おう。

仕事一筋に生きてきた真面目人間が定年を迎え、趣味をもっていないと、退職二・三年でボケだすことが分かってきました。毎日の大部分をテレビの前で居眠りしながら過ごすので「グウタラボケ」といいます。具体的な例で申しますと謹厳実直な校長先生のようなタイプの方に多いそうです。

最近「クリニカルPET」あるいは「PETスキャン」「ポジトロンCT」という名称で呼ばれている便利な画像診断装置が開発され、それで頭の使い具合を覗くことが出来るようになりました。例えばプロの棋士が碁や将棋の対局中に脳の何処の部分を使って考えているかが、画面に出てくる仕組みです。学問や知識のような知的な領域の活動を総称して知性と言いますが、知性は主に大脳の左側、左半球を使っています。一方、知性に対して感性という言葉で総称される活動は右半球を使っていることが分かりました。さらに「おでこ」の辺りの前頭葉とか前頭前野と呼ばれる所は、左右の大脳半球の統合、すなわち知性と感性とを統合する、より高次の働きをしていると言われております。

仕事一途でボケた人の脳をクリニカルPETで覗いてみると、右脳が殆ど使われていない状態にあるそうです。ボケは前頭前野の機能低下に基づくといわれ、右脳を使わずに老いるとボケが早いそうです。では右脳を使うにはどうすれば良いでしょうか、ボケ防止は今からでも間に合うのかという疑問が生れます。

右半球の果たす感性の範囲は広く、音楽、絵画のような芸術、詩歌、小説のような文学、ゲーム、スポーツなどの趣味、それに遊び、友情、意欲、生き甲斐などの感情の分野を含みます。感性が少なく,ボケ易い人の特徴は次のようなものです。

1.  話が理屈ぽく冗談やユーモアが言えず愚痴が多い。
2.  笑顔が少なく伴侶、子供に対して優しい言葉がいえない。
3.  音楽やゲームをバカにし、趣味や遊びのない生活をしている。
4.  外聞や体裁を気にし、気位が高く、子供には勉強だけを強制する。
5.  真面目一途で、仕事、地位、金銭に執着し、名誉や勲章が大好き。
6.  上司に諂い、部下に威張る。相手によって電話の話し方が変わる。
7.  単調な生活を好み、変化を望まない。
8.  親友も異性の友だちも殆どいない。
9.  積極性がなく全てに引っ込み思案、出不精である。
10. 花や動物に愛情を持たない。気配りができない。

こんな特徴が多く当てはまる人程、はやくボケるそうです。ボケは高血圧,高脂血症,糖尿病と同様生活習慣病であることが明らかに成りつつあります。老人性痴呆の大部分は,ボケるような生活をしてきたからです。この種のボケを,老化・廃用型痴呆と呼び,全痴呆の90%を占めております。残りの10%のうち脳梗塞、脳出血のような血管性痴呆が5%,頭蓋内の病気によるもの2.5 %,  アルツハイマーなどが2%です。
グウタラボケは重度の痴呆になる前に、脳リハビリを行えば回復可能だそうです。

現在の医療の考え方は、リハビリより薬物療法で治そうとし、効果の無い脳代謝改善剤が、8000億円も無為に使われておりました。その結果回復可能な軽症者を重症にしてしまい、介護費用を増大させているのです。

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