おくすり千一夜 第五十一話 センソにもバイアグラ効果が!

五疳薬について耳寄りな情報がありますのでお話しましょう。六神丸を初めとする五疳薬で厚生省が認めている薬効は、「どうき、息切れ、気付け」だけです。筆者がコントローラーをした二重盲検臨床試験でも、有効と思われた症状は、「どうき、息切れ、易疲労感、立ちくらみ、全身倦怠感、発汗、不眠」でした。この場合血液の循環不全に伴う不定愁訴の中から項目を選びました。多分「気付け」は易疲労感、立ちくらみ、全身倦怠感の総称と思われます。

五疳薬のなかで作用が顕著な生薬に「センソ」があります。センソは蝦蟇の油そのもので、強心、呼吸興奮、局所痲酔、利尿、抗不整脈の各作用等のあることが証明されておりますが、最近新たな効果が期待されるようになりました。

それはバイアグラの作用機序が明らかになったことで、センソにもこれに近い効果が期待できるからです。と言っても強力な効果ではありません。

動物にストレスを加えると性行動が低下したり、消失したりします。また学習能力も低下しますが、センソを与えておくと低下した性行動や学習能力が回復するそうです。
センソには上記の五つの作用以外に自律神経系に対し「交感神経を抑さえ、副交感神経を興奮させる作用」が元々あるのです。ジギタリスやセンソの強心作用は心臓への直接効果だけでなく、副交感神経の興奮によって末梢の血管を弛緩させ、血液の流れを良くしているとも考えられておりました。

以前から五疳薬には強精・強壮作用があるとの噂はありましたが、どうして効くのかその作用機序は謎でした。バイアグラの効くメカニズムが解明されて、それが自律神経系の交感神経を抑え、副交感神経の活性を高めることで、陰茎の血管が拡張し、海綿体が充血し、勃起がおこるのだと言うことが明らかになりました。

もう少々詳しい生化学的なメカニズムについては、この放談の「バイアグラを女性が使ったら?」の中に記載しておきました。

一般に交感神経は身に危険が迫った時や、ストレスを感じている時には活発になって、血管を収縮させたり、心臓の拍動を速めたりします。精神的な焦りや、対人関係の確執は交感神経の活性を高めるため、勃起障害の原因と考えられます。

六神丸のような「五疳薬を愛用していると調子が良い」という言葉を私共はよく耳にしてきました。調子がよいとは実はこのことだったのかも知れません

円満な家庭生活に五疳薬が欠かせない存在で愛用されたきたことが、これで明らかになりました。われわれ日本人は性の問題を口にすることを今まで憚ってきました。バイアグラが許可になても、医師の処方せん無しには買えないことから、筆者はいろいろな人達から相談を受けます。バイアグラをニトロのような抗狭心症薬と併用したことで死亡例が出ております。六神丸を初めとする五疳薬の使用実績からすれば、センソの入った同効薬は、作用は弱いとしても、はるかに安全なお薬と言えましょう。

◀︎◀︎表紙へ戻る