おくすり千一夜 第六十八話 アルミに関するQ and A
この放談に,ある方からご意見と質問が寄せられました。筆者の解答と合わせて紹介させて頂きます。以下原文のまま。
はじめまして。毎回興味深く拝見させていただいております。 私はアルミ無機化合物について多少研究している者ですが、貴殿の「アルミとアルツハイマー」に関する四話(おくすり千一夜の第十九話、三十二話、三十七話、四十話)にわたってのレポートについて少し質問したい事があります。アルツハイマー型痴呆症の要因、因子のひとつにアルミニウムがある、と言う事に関しては私はシロウトなので意見はできません。世界中の研究者達の結果報告を待ちたいと思います。まず、アルミニウムの定義なのですが、一口に「アルミ」といってもその形態は様々です。基本的には、AL⇒金属アルミ、AL2O3⇒酸化アルミニウム(アルミナ)、AL2O3・H2O⇒水酸化アルミニウムその他AL化合物等に分類されます。それぞれの形態は全く異なった物性を示し、その用途も多岐、広範囲に渡り我々の廻りに存在しています。詳細な内容は省きますが、この事を前提に質問いたします。
質問 1:「やかん、鍋、釜はアルマイト製品に変えましょう」⇒酸不溶の膜というのはアルマイト皮膜のことを指されているようですが、皮膜も立派な「AL2O3」です。と言う事は「AL2O3」は安全と言う事ですか?
メール拝見。適切なご意見、御助言ありがとうございました。早速お答えできるものから答えさせて頂きます。
回答 1:アルミの酸化皮膜アルマイトはアルミナで、これが使用中に剥がれて中のアルミ金属が露出しない限り酢のような酸による溶出は考えられません。ですから私も安全と考えております。
質問 2:「酸性雨の多い地方にアルツハイマー型痴呆症が多い」⇒アルミニウムの原料であるボーキサイトが南半球に多く埋蔵されているためでしょうか。
雨水にアルミ化合物が混入しても(決して水に溶ける事はありません)また地中、海水に戻るだけです。これは人類誕生以前から変わらぬ事実ですし、現在、その南半球にも数十億の人間が住んでおり、その水を何千年も享受しています。これは本当はその率を統計学的に分析しなければおいそれと発表できないのではないでしょうか。 例え東大教授と言えども。
回答 2:東大の先生は疫学調査の結果を言っておられるのです。ニュースをそのままお伝えしたまでですが、現時点ではアルツハイマー型痴呆症と、それ以外の痴呆、例えば透析痴呆について明確な判定基準があって、それに従ったものかどうかは不明です。脳の血管障害による痴呆以外は判別が難しいので透析痴呆の代名詞としてアルツハイマー型痴呆症と言う言葉が使われているようです。
質問 3:「アルマイトの弁当箱が梅干で穴があいた経験は誰もお持ちのはず」⇒終戦直後にはそう言う事があったそうです。これは戦後物資不足の中で鉄分の多く混入した劣悪なアルミ合金が多かったからです。 1960年以降、純アルミ、腐食に強いアルミ合金等が開発され輸入品を除いては根絶されているはずです。高度成長期に学校給食食器に採用されたのもその耐久性が証明されたからです。(途中で樹脂に変わったのは単純にコストのためとも聞いていますが)今もアルミの弁当箱はいろいろな種類が販売されています。おそらく40才代以下の人で弁当箱に穴をあけた人は皆無と思いますがいかがでしょうか。
回答3 :今痴呆の危険に曝されているのは戦前、戦中派の人達です。この人達に良く理解できる例として引用いたしました。
質問4 :「疑わしきは使わない、服用しない」医薬品に関してはシロウトなので文献を頼りにしますが、古くは古代エジプト時代から目薬や止血剤として「みょうばん」が使われていたそうです。縄文時代からの「土器」はアルミ化合物のカタマリです。
浄水用に使われる硫酸アルミニウム(最近はポリ塩化アルミが主流)による水道水のアルミ含有率は大体0.2mg/1000mg。これを超える基準の地域は気を付けたほうがいいと言いますが、天然の野菜には約20~40mg、コーヒーも40mg、牛・豚・鶏肉でも10~15mg、およそ人間が摂取する食べ物の大部分にアルミニウムは含まれています。極端な話、空気、埃にまで含まれています。
そして1日のアルミ摂取量は20mgと書かれていましたが個人差があります。百mg~数百mgが平均と思われます。要するに鍋からの溶出分摂取を控えようが、アルミ缶飲料をやめようが、どのように気をつけていても(過去数千年の歴史の中でも)大量の経口摂取からは免れないと思うのですがいかがでしょうか?
回答4 :「みょうばん」この物質はアルミニウム化合物です。摂取すると健康な人でも排泄されにくく、毒性のあることがわかり、医薬品としては使用されなくなりました。眼科でも目を洗うためには使わなくなりました。ナスの発色は鉄ミョウバンですが、よいことではありません。「土器」土器からは殆ど溶出いたしません。
「一日のアルミの摂取量」おおせの通りです。健常人は排泄能力がありますから、普通問題になりません。大量に摂取しても血液中の濃度は二倍程度までしか上昇しません。今私が訴えたいのは、日本には六百七十万人とも言われる糖尿病患者がおり、その予備軍と合わせると実に千三百万人、国民の一割強の痴呆予備軍がおり、この人達は、どんなに管理が行き届いていても確実に病状か悪化し、十年二十年後には血管が脆くなって目や腎臓の疾患を併発することが確実で、やがて透析を必要とするようになります。
腎臓の機能が低下すると、血中のアルミニウム濃度はどんどん上昇します。濃度が高くなると、本来鉄イオンを脳に運んでいたトランスフェリンという物質に乗ってアルミが脳に入るメカニズムが分かってきました。これが透析痴呆です。糖尿病患者の人達に「惚けたくなかったら気を付けましょう」というのが私の主張です。
日本軽金属協会や三協アルミのホームページにも「透析痴呆症は、かって、透析を受けていた患者の腎機能が正常に働かないために、人工透析用の水に多量に含まれていたアルミを尿中に排泄することができず、発症した病気です。」とか「透析痴呆症とアルツハイマー型痴呆症とは別の疾患であり、」とアルミと痴呆の関係は認めておられます。
質問 5:「食器類は鉄か銅か陶磁器に変えねばなりません」⇒陶磁器は立派なアルミ化合物ですがそれでもよろしいでしょうか。
ルビーやサファイヤなどの宝石類もアルミ化合物です。巷にあるセラミックと呼ばれるほとんどの製品もそうです。 研磨剤として歯磨きにも入っています。ガラスの中にもフリットとして入っています。 合成洗剤もそうですがこれはアルミノケイ酸塩が主成分です。 天然ゼオライトとしても日本各地で産出しています。
これも極端な話ですが木材の中にも含まれています。(地表に根ざしているから当たり前ですが)これも前段で述べたように、身の回りにあるアルミは何もサッシや鍋だけではありません。アルミは必須金属ではないですが空気やケイ素と同等レベルで語らねばならない「地球」を構成している絶対的な物質のひとつです。これを排除しようとする事自体がナンセンスだし、不可能なことであると思うのですがいかがでしょうか。
回答 5:私が申し上げたいのは、摂取して胃酸で溶けてしまうようなアルミは避けようと言うのです。アルミの入った制酸剤には必ず「腎臓の悪い人は医師や薬剤師に相談すること」とあります。薬理学書にも制酸剤のようなアルミ含有医薬品を摂取していて、排泄能力が落ちると「脳症」になると記載されております。
質問 6:「アルミを体内から除去する事の出来た動植物だけが地球上で繁殖できたのです。」この事についての論拠を教えて下さい。 生物学者の研究出典、このために絶滅した種の内容、その要因究明に用いられた解析方法等。私は現在あらゆるネットに連絡をとっていますが、この事についてだけは全く回答らしい回答が得られませんでした。
この仰られている言葉は取りようによっては大変恐ろしい言葉であり、理解の浅い人間にとっては脅迫に近い内容と思います。事実であるならば我々の研究機関での一つのテーマに取り上げたいと思いますので宜しくお願い申し上げます。
回答 6: これは仮説です。仮説を覆すにはアルミを体内成分に持つ動植物を示せば勝負有りです。是非紹介して下さい。人間の体にもトレイスエレメントとして金属が必要です。鉄、コバルト、亜鉛、マンガン、ニッケル等等残念ながら、生命体にはアルミは毒性はあっても有用性は今の所見つかっておりません。
最後にもし差し支えなければ Q & A のかたちでこの内容をホームページに乗せようと思いますが、如何でしょう。願わくは貴殿 が営利企業の代弁者でなく純粋に学問として老人大国日本の将来のために、アルミと生体とのかかわりをお考えいただける方であらんことを。