おくすり千一夜 第七十二話 インフルエンザは漢方療法の勝ち!
またインフルエンザの季節がやってきました。以前は流行性感冒、略して流感と呼ばれておりましたが、いまはインフルエンザです。大都会近郊での発生が報告されています。厚生省はワクチンの接種を義務付けておりましたが、重篤な副作用の出現もあって、各自の責任で接種することを推賞しております。
つい昨年までは、全ての風邪に解熱剤が使われておりました。ところがアスピリンや類似薬を小児にのませると、ライ症候群という重篤な脳症の発生することが分っており、98年末漸く厚生省は小児への使用を禁止したため、かぜには解熱剤が使われなく、なりつつあります。
代わって使用許可になったのが「塩酸アマンタジン」です。A型に効く新しい抗ウイルス剤ですが、検索されたウイルスに、すでに50%程、抗体の存在が認められると聴いております。
さらに作用機序の異なる新しい薬剤が開発され、海外で使用されております。「ザナミビル」と言い近々使用可能になるでしょう。但し薬理効果については、日本で実施した第二相試験で、プラセボとの間に有意差が認められず、市販は認めるが後でもう一度試験をし評価するそうで、現在、日本で有用性が認められた訳ではないと厚生省は説明しております。
解熱剤も駄目、ワクチンも駄目、抗ウイルス薬も余り期待できないとすると私共はどう対処したら良いのでしょう。そこで良い方法をお教えしましょう。
かぜの90%以上はウイルスで、200種類ほどが知られており、単なる鼻かぜにライノウイルス、コロナウイルス。喉がやられるアデノウイルス、コクサッキーウイルス。高熱の出るものに、インフルエンザウイルスやパラインフルエンザウイルスがあります。
これらウイルスにも共通する弱点があります。「ウイルスの弱点とは熱と湿気に弱いこと」です。ですから居住空間はあまり乾燥させないこと、マスクは効果がないと言われますが、口や鼻に保湿効果があるので無意味ではなさそうです。インフルエンザウイルスは体温を上げると不活性化され、淘汰されることが分かってきました。
そこで登場してくるのが漢方薬です。インフルエンザは病弱な人はもちろん、健常人も感染すれば必ず発病し、先ず高熱が出て、手足、肩にこわばりや痛みを生じます。健常人の体調を漢方では実症と言い、急性期には葛根湯が効きます。湯剤と共に水分を沢山とって一汗かけば回復します。実症の治療指針は発汗です。風邪がこじれたら小柴胡湯が効きます。大部分の方は実症ですからこれで十分でしょう。
肺や心臓の弱いお子さんやご老人で、発汗が荒療治と考えられる虚症の患者さんには副作用の比較的少ないアセトアミノフェンのような薬剤で熱を有る程度下げることも必要でしょう。虚症の人達の治療に素人判断は禁物です、医師の指示に従うべきです。
この内容を読まれて、病気の治療に新薬を使うことばかりが最善ではないことを御理解頂けたと思います。インフルエンザに対する漢方治療の正当性もウイルスの性質が分かって初めて証明されたのです。ですから、風邪の治療法は西欧医学ではなくて漢方の勝ちと筆者は軍配を上げることに致しました。