おくすり千一夜 第七十九話 ミノキシジルは本当に効くのか

歳相応に髪が薄くなるのは風格と相まって良いものです。しかし若禿げは御本人にとっては悩みの種でしょう。そんな気持ちに付け込むように、いろいろな育毛剤が開発され、宣伝されて来ました。これまでの所、殆どのケースで本人の努力の甲斐もなく好結果は得られませんでした。昨年あたりからミノキシジルの外用剤「ROGAINE」が我が国でも「リアップ」という商品名で発売され、目下、大変なブームです。このお薬は本当に効くのか、少し調べてみました。

結論から先に言うとどうやら効くと言ってよさそうです。その理由をこれからお話しましょう。

第一は世界的に権威の認められている薬理書「Goodman & Gilman’s The PHARMACEUTICAL BASIS OF THERAPEUTICS」の最新版に解説が載っていることです。筆者にとってこれは驚きでした

第二はアメリカの食品薬品局FDAが毛髪成長促進剤として、初めて認可したことです。

このお薬は、はじめ血圧降下剤として検討されておりましたが、服用に伴って多毛という副作用のあることから、育毛剤として開発されたものです。どの程度効くのかは、臨床試験の結果を待たなければなりません。全米で行なわれた二重盲検試験において、ミノキシジルの2%溶液を塗布すると、男性型脱毛症の0.7%で高度の発毛が、8%で中等度の発毛が、25%で軽度の発毛が認められました。筆者も育毛剤(OMG)の治験に関与したことがありますが、目に見えた効果は殆ど認められませんでした。ですから、上の結果は大変画期的な内容なのです。

このお薬は四十歳以下、禿の症状が始まって十年以下、あるいは禿の直径が十センチ以下の場合に効果が見られるそうです。言い換えれば早いうちでないと効果が出ないと言うことです。

女性の患者では男性より効果が高く、2%溶液を7~8ケ月連用したところ、63%の女性患者で軽度から中等度の発毛が認められたそうです。

このお薬の作用機序はまだ充分に解明されているわけではありませんが、性ホルモン(アンドロゲン)に拮抗する作用はないと言われております。主に毛嚢下部附近の上皮細胞を増殖させる作用があり、頭皮の血管拡張を誘導するものと考えられております。ミノキシジルは男女の性ホルモン型の脱毛症に適応が認められております。禿は男性ホルモンの強い証拠と今まで言われてきました。一日二回の塗布が必要で、中断すると折角再生あるいは残存していた毛髪は脱落してしまうそうです。治療を始めたら一定期間続けることが必要です。

それから、元血圧降下剤なのに、有り難いことに心臓や血管に対する副作用の報告は無いそうです。我が国で一時騒がれた心血管系の副作用はいささか信憑性に乏しいもののようでした。

しかし、アレルギー性の接触性皮膚炎や刺激に対する過敏反応は起こることがあるそうです。当然のことながら頭部に使用していても、それ以外の所に発毛が生じたとの報告もあるそうです。副作用が主作用になったのですからこれは仕方がありません!

追補 : 平成16年3月31日、厚生労働省はリアップの副作用と疑われる症例が208例もあり、うち死亡例が3例あったことを明らかにしました。禿げは男性ホルモンによると言われています。髪の毛が薄くなった男性諸君、もっと自信を持ちましょう。

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