おくすり千一夜 第八十一話 プロポリスとは

プロポリス(Propolis)はミツバチの巣の成分物質で、ミツバチが樹木の蕾や樹皮を採集し、これに自分の分泌物を加えて練り合わせた暗褐色ワックス状の粘ばりのある物質を言います。

ミツバチがプロポリスを作る目的は、巣の入り口に塗って外敵の侵入を防いだり、巣を修理するための結合剤や補強剤であり、とくに巣を細菌やカビから守るための殺菌剤としての役割を持っていることです。

クスリとしての歴史は古く、紀元前のエジプトの書物に記載されております。古代のエジプト人は、ミイラを作る際に防腐・保存の目的で死体に塗布したとも言われております。アリストテレスの「動物誌」には「プロポリスは皮膚疾患、切り傷、感染症の治療薬」と記載されています。またデイオスコリデスの「薬物誌」には蜂蜜、蜜蝋に次いで「ミツバチのにかわ」の項があり、「塗った時、乳香のようにのびがよく、それはとりわけ暖かく、ひきつける作用があり、とげや破片を抜くのに役立つ。燻蒸して用いると咳を止め、塗れば苔癬を消し去る。それはミツバチの巣の入り口のあたりに見い出され、その性質は蝋に似ている」と記述されています。

現在の主要産地はブラジルで、実験で確認された薬理作用には抗菌作用、抗ウイルス作用、消炎・沈痛作用、肝保護作用、抗酸化作用、抗糖尿病作用、抗腫瘍作用などがあると言われております。

プロポリスの組成は地域によって異なるため標準品がありません。共通する生理活性に「抗酸化作用」があるそうです。

日本ミツバチはプロポリスを作りません。中国ではミツバチではなくスズメバチの巣が「蜂房」という名称で薬典に収載されております。

プロポリスの有効性分としてはフラボノイド類が検出されております。また水溶性の画分には活性酸素を消去する性質のあるこが見いだされております。さらに膵臓のβ細胞を破壊して人工的に糖尿病を発症させるストレプトゾドシンという薬物に拮抗する性質があり、四塩化炭素による人為的な肝臓障害に対しても、これを保護する効果のあることが動物実験で証明されました。

プロポリスの一般成分は半分は樹皮、30%のワックス、10%の精油、5%の花粉、5%の各種有機化合物およびミネラルで、有機物の中には有機酸類、石炭酸の誘導体、芳香族アルデヒド類、各種フラボノイド、それにミネラル、ビタミン類、各種アミノ酸が含まれているそうです。

現在我が国ではプロポリスが健康飲料として百数十社から販売されています。「蜂蜜」が食品として優れていることは、今さら説明するまでもないでしょう。続いて商品化されたものに「ロイヤルゼリー」があります。女王蜂を育てるために働き蜂が王乳という分泌物をだし、これのみで育てられた幼虫が女王蜂に成長して、驚異的な数の仔を生むことから奇跡の食品と考えられておりましたが、分析の結果は総合アミノ酸食品であり、これを人間が少量食したとしても、特別な変化は起こるはずも有りません。

プロポリスは蜂が作り出した第三の奇跡の食品と考えられて来ました。このような健康飲料の摂取を筆者は一種の文化と見ています。信ずる方にはそれなりの効果があるでしょう。

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